EARTH, WIND & FIRE / Gratitude
CD (Columbia PG-33694)
Producer: Maurice White, Joe Wissert

アース・ウインド&ファイア (以下、 アースと略) という、モーリス・ホワイトをリーダーとする集団、 その70年代中期の “シャイニング・スター” ぶりを思い出す と、 いまも気分が昂まる。
ソウル、 ファンク、 ヴォーカル&インストゥルメンタル・グループ等々、 アー スを形容する言葉はいろいろあるが、 70年代ブラック・ミュージックの核となる共同体としての音、そのみなぎるヤル気と勢いとツヤに、 いまもときめく。
心も体も一つになって、 明日からの、これからの人生に向かって奪い立つ、 というソウルのテーマをアース は見事に盛り上げる。
聞き手を、 また自らをグイグイと強引に、 そしてたっぷりと感じさせて鼓舞するアースを知るには、 何といってもこの 75年のライヴとなるだろう。
シカゴ、 ロサンジェルス、 アトランタ、 ボストン、 ニューヨーク、 フィラデルフィアそしてワシントンDCでのライヴで、 オリジナルは2枚組LPとして発表され、 ブラック・チャートはもちろん、 ポップ・チャートでもトップの売上げを記録している ((9) 以降はスタジオ作)。
インスト (1)(8) での 煽り良し ((8) のファンク・シンフォニーのスリルは不滅だ)、 モーリス・ホワイトと共にリード・ヴォーカリ ストとして売ったフィリップ・ベイリーのファルセット冴えるバラード(5)良し、 音の連続性を重視した構成となっているのも見逃せない。
カリンバ (親指ピアノ) をフィーチャーしての 「アフリカ想起」 作品は、 アースの特徴ともなった。
- ①”Earth, Wind & Fire”
- ②”The Need Of Love”
- ③”Last Days And Time”
- ④”Head To The Sky”
- ⑤”Open Our Eyes”
- ⑥”That’s The Way Of The World”
- ⑦”Spirit”
- ⑧”All’n’All”
- ⑨”I Am”
- ⑩”Faces”
- ⑪”Raise”
- ⑫”Powerlight”
- ⑬”Electric Universe”
- ⑭”Touch The World”
- ⑮”Heritage”
- ⑯”The Best Of”
- ⑰”The Best Of, Vol.II”
リーダーのモーリス・ホワイト (1944年メンフィス生まれ)のプロ・ミュージシャンとしてのキャリアはシカゴで、 チェス・レコードでのセッション・ドラマーとして始まり (ブルース/R&B/ジャズまで)、 66年にファンキー・ジャズの大御所ピアニスト、 ラムゼイ・ルイスのドラマーとなって3年間活動し、 その後69年にシカゴでザ・ソルティ・ペパーズなるグループを興し (「ラ・ラ・タイムズ」 というシカゴ地区ローカル・ヒットをあり)、 それがアース・ウィンド&ファイアと改名する。
メジャー・デビューはワーナー・ブラザーズからの71年①で、 翌72年には②を発表している。
この①②は後 「アナザー・タイム』 として2枚組で再発されているが、 しかし当時のアースはモーリス・ホワイトが狙ったという「ソウルとロック/ジャズの一体化」をそのまま中途半端な結果に終わらせている。
そのグループ名かハッタリでなくなったのは72年末にCBSコロンビアに移って発表した③以降で、 特に75年の⑥、 そして先のライヴ、 さらに76年の⑦が、 アースが時代の音となっ た3部作となる。
「アフター・ザ・ラザ・イズ・ゴーン」 という傑作にして大ヒット・シングル作を含む79年⑨を最後に、 アースは急激に萎える。
83年⑬から4年間のグループ活動停止があっての87年⑭、そして90年⑮での過去に依存しただけの形骸化した音は、 さみしい。
そのグループ休止の間に、モーリス・ホワイトはベン・E.キングの「スタンド・バイ・ミー」を巧みにリメイク。
⑱”Stand By Me”
そして、モーリス以上にヒット・グループとしてのアースの顔となったフィリップ・ベイリーもソロ作を83年から発表。
⑲”Continuation”
⑳”Chinese Wall”
㉑”The Wonders Of His Love”
㉒”Inside Out”
㉓”Triump”
㉔「ザ・ベスト・オブ」
㉑㉓そしてそのベスト集となる㉔がコンテンポラリー・ゴスペル・アルバムとなる。
なお、 アース一派は78 年に弟分グループ、ポケッツをデビューさせたり、 かつてのボスであるラムゼイ・ルイスをアルバム 『サン・ゴッデス』 で74年にファンクさせたりしているが、 スタックスの姉妹トリオ、 エモーションズを77年に 「ベスト・オブ・マイ・ライフ」 でチャート1位に再び花咲かせたことが忘れられない。
転載:U.S. Black Disk Guide©高地明

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