LP (Atlantic SD-16003)
Producer: Nile Rodgers, Bernard Edwards

屈辱と引き換えにして歴史にその名を残すということがあ る。選挙の際の敗戦候補がそうだし、本塁打数更新記録を献上してしまったピッチャー、というのもそうだ。
しかし、主人公ではないからこそ”屈辱”はカンベンしてほしい、というのが当事者のホンネ。
できれば誰でも“名誉”なままでいたいよね。
その点、思わねところで名誉を獲得したのがシック。
すなわち、ラップ・ナンバーとして初めてのメジャーヒット、シュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」のベース・トラックを生み出したグループとして、である。
その曲は言わずとしれた「グッド・タイムス」。
本アルバムのトップに収められたナンバーだ。
多くの人が認めていることではあるが、シックのサウンドを特徴づけていたものとしては、ナイル・ロジャースの歯切れのよいリズム・ギターをまず挙げることができる。
鈴木啓志氏言うところの「かつてのディスコ・ミュージックのBPMに相当していた」ナイルのギター・ワーク。
それはもう革命という言葉が相応しいもので、今なおそのスタイルは確実に残っている。
80年代、”ナイル・ロジャースっぽい….”という表現にどれだ接したことか。
ただ、テクニカルなミュージャンとしてだけてなく、プロデューサーとしても革新的だったナイル・ロジャースの威光は、どちらかというと“ブラック・ミュージック大好き白人ミュージシャン”にこそ強いのが現状のようではある。
しかし、熱心なブラック・ミュージック・ファンにいわせると、シックの魅力はバーナード・エドワーズのベースに尽きるという。
かく言う僕もそのひとり。
先の「グッド・タイムス」を挙げるまでもなく、バーナードのベース・リフの習慣性は凄まじく強力だ。
80年代に入って開花したヒップ・ホップの心臓音とでも言うべきものである。
今作以後ファンク・パンドとしては失速していったシックの頂点はここにある。
▶Some More from this Artist:
①”Dance, Dance, Dance” (Atlantic 19153)
②”Elegant Chic” (同 19209)
③”Glad To Be Here” (同 80079)
①は77年のファースト。
レコード会社への売り込みには失敗したものの、テスト・プレスがNYのディスコ・シーンで注目を集めることになり、慌ててアトランティックが拾ってくれたというシングルが「ダンス・ダンス・ダンス」。
そしてその余勢をかって78年に出されたセカンドが②で、このアルバムで彼らは単なるディスコ・バンドの枠を越えた。
③はバーナード・エドワーズの唯一のソロ・アルバム。
ナイル2枚のソロよりこちらが断然上。
ヴォーカルのジョスリン・ブラウンもいつになくR&B色が強い。
スモーキーの「ユーヴ・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」におけるルーサー・ヴァンドロスのコーラス・アレンジにも耳を傾けたい。
転載:U.S. Black Disk Guide©松尾潔


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