youtube musicでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.179

音楽

RUFUS & CHAKA / Masterjam

LP (MCA 5103)

Producer: Quincy Jones

【A】(1) Do You Love What You Feel (2) Any Love (3) Heaven Bound (4) Walk The Rockway 【B】(1) Live In Me (2) Body Heat (3) I’m Dancing For Your Love (4) What Am I Missing? (5) Masterjam

80年代に入ってからチャカに似た歌い方をする女性シンガ一を何人耳にしたことだろう。

中には結構気に入ったのもおり、逆にその創始者としてのチャカを見直そうというのが、ぼくのルーファスおよぴチャカ・カーンに対する関心の始まりだった。

79年のナンバー・ワン・ヒットであり、彼らの代表作の1曲といっていいA(1)に早くもその特徴は顕著だ。

まず、そのひとつは、はねるリズムに非常によく乗る声、唱法だということだろう。従来通りの力まかせのシャウトを武器にしながらも、一語一語分断させるように力点を置きながら歌う。

ジャズ・ヴォーカルから来たと思われる語の崩し方もこうした曲では実に見事に決まる。

たとえば、この曲をアレサ・フランクリンが歌うことを考えてみればいい。

必要以上に単語を引き伸ばして歌うやり方がリズム感を損ねてしまうか、精々スキャット風ヴォーカルでごまかす(?)かする程度だろう。

チャカの歌が実に革命的・斬新なものだったことは明らかだが、逆にその新しさに最初は非常に抵抗感をおぼえたことも事実である。

このアルバムでも、チャカのそうした特質がA(3),B(1)(4)といった曲ではかえってマイナスになっているのではないかとさえ思えるほどである。

まあ、このアルバムはA(1)1曲あれば、それだけで十分かもしれない。

似たタイプのA(2),B(2)(5)あたりがそれに迫るが、曲としてはまるでA(1)の魅力に及ばない。

とにかく、人気の高い曲で12インチ・ヴァージョンまで引っ張りだこだ。

この当時のルーファスは、ベースのボビー・ワトスン、ギターのトニーメイデンといった黒人も加入し、それにクインシー・ジョーンズという仕掛人も加わって、一番脂が乗っていた頃といって良かった。

トニーがリードを取ったファンク・ナンバーA(4)あたりもなかなか勢いがある。

▶ Some More from this Artist:

①”Rufus” (ABC 783)

②”Rags To Rufus” (同 809)

③”Rufusized”(同 837)

④”Rufus Feat. Chaka Khan” (同 909)

⑤”Ask Rufus” (同 975)

⑥”Street Player”(同 1085)

⑦”Camouflage”(同5270)

⑧”Live+4″(WB 1/4-23679)

ルーファスはアメリカン・ブリードというロック・グループが前身なので、初期のメンバーはほとんど白人ばかりだった。

その中に1人チャカ・カーンがいたのだが、それだけですぐにブラック・サウンドが生まれるわけではない。

73年のデビュー作①などは、ほとんどソウルとは言い難いもので、正直いって聞いているのがつらい。

といって、当時こうしたタイプの音楽は結構あったのであり、黒人側から見ればその音楽が幅を広げていくための試行錯誤の段階といえなくもない。

74年の②になって、ようやくスティーヴィ・ワンダーの「テル・ミー・サムシング・グッド」やナンバー・ワンとなった「ユー・ガット・ザ・ラヴ」のような曲が生まれて、ファンクを自己のものにしつつあるルーファスのスタイルが芽生え始めたが、まだまだ後年の曲に比べると魅力は薄い。

この②では「スウィング・ダウン・チャリオット」でもチャカの特徴が現われている。

この有名なスピリチュアル・ナンバーを見事に自己のファンク・スタイルに溶け込ませたPファンクに比べて、チャカのアプローチはかなりジャズっぽい。

続く③では、メンバー交替があり、トニーやボビーが加ったものの、そのスタイルは⑤までほとんど変っていない。

だが、④からは「ダンス・ウィズ・ミー」⑤からは「アト・ミッドナイト」のビッグ・ヒットが生まれ、この 2曲で一番チャカらしいスタイルがほぼ完成されたと見ていいだろう。

その一方で「ハリウッド」(⑤所収)が大ヒットしているところを見ても、ソウル・ナンバーをジャズっぽく崩していくという彼女のやり方が支持されていたことがわかる。

78年の⑥は内容的にどうということのないもので、そのせいか以後彼らは共にレコーディングを続けながらも、ルーファス、チャカがそれぞれソロでアルバムを出していく形を取る。

ルーファスは意外と普通のソウル・グループ的な感じが強く、83年の”SealIn Red”(WB 23753)など歌もよいし、内容的にもかなり充実している。

そうした彼らの持味と、クインシーの意図がうまくかみ合ったのが先にあげたアルバムといっていいのだろう。

ルーファスとチャカが合体しては、なおも⑦⑧を作り続けたが、⑦では先行きが見えず、ニューヨークのサヴォイ劇場で録音された⑧が最後の集大成のような形になった。

2枚組最終面では多少スタジオ録音も試み、「エイント・ノーバデイ」のナンバー・ワン・ヒットも生まれたが、彼らの役目は既に終った感じがする。

78年にチャカがソロになってからのアルバムは既に10枚近くを数える。

デビュー作は”Chaka” (WB 3245)でなかなか。“What Cha Gonna Do For Me” (同 3526)のタイトル曲なんかも彼女の80年代のベストと思っているほど。

一般には”IFeel For You”(同25162)のタイトル曲の人気が高いが、ぼくはほとんど魅力を感じなかった。

転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志

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