LP (A&M SP-4646)
Producer: Bobby Martin

70年代のソウル・シーンで大きな流れとして忘れる訳にはいかないのが、大型ヴォーカル&インスト・グループの活躍。
中でも、音楽的に充実を見せ、また商業的にも大きな成果を収めたのが、ビリーとジュフリーのオズボーン兄弟を中心とするL.T.D.。
幅広い音楽性を消化したスケール豊かなアンサンブルとソウル臭たっぷりのヴォーカル。
ダイナミックな乗りでディスコを席巻する実力派ダンス・バンドである。
77年発表の本作は、新たにフィラデルフィアの名プロデューサー、ボビー・マーティンを迎えることで、これまでに感じられた未整理な部分が解され、L.T.D.としてのスタイルが確立されたアルバム。
EW&Fの影響は完全に取り除かれ、元来彼らか基盤に持つオーソドックスなソウル・センスが、ボビーの施すメロウでファンキーな音作りの中で活き活きと躍動する。
ジェフリーの熱っぽいヴォーカルと粘着性リズムで乗せるファンク、R&Bチャート1位を記録したA(3)や泥臭くゲット・ダウンするパーティ・ナンバーB(1)が最高だが、フィリー・ダンサー仕上げのA(1)、B(3)ディープな都会バラードA(2)、B(4)も、彼らの実力の証明となるであろう。
▶ Some More from this Artist :
①”Love Together & Devotion” (A & M 3602)
②”Getting Down” (同 3660)
③”Love To The World” (同 4589)
④”Someting To Love”(同 4646)<上掲>
⑤“Togetherness”(同 4705)
⑥”Devotion”(同 4771)
⑦”Shine On” (同 4819)
⑧”Love Magie” (同 4881)
⑨”For You” (Montage 105)
ジェリー・バトラー、カルヴィン・カーターがプロデュースした①は、ジェフリー以外に女性ヴォーカルがリードを取ったりるするが、様々な要素がとりとめなく提出された中途半端な仕上がり。
続く②は完全にディスコに焦点を定めたアルバムで、未完成ながらも黒っぽいバンプがゴキゲンだ。
ダンス・ファンには必携である。
③は、明らかにEW&Fのコンセプトを下敷にしたもので、サウンドにもその傾向が表われているが、今ひとつ拭い切れぬ下世話な感覚が彼らなりの色となる。
ジェフリーが洗練の中にスピリチュアルなトーンを込めて歌う大ヒット、80年代ブラ・コン・バラードの先駆的作品とも言うべき「ラヴ・バラード」 が聴かせる。
④~⑦はボビー・マーティンのプロデュースによるアルバム。
ロマンティックなバラードからヘヴィなファンクまで、ヴォーカルの力量を重視した均整の取れた作りは、ボビーならではの手腕。
いずれる甲乙付け難い仕上がりを見せている。
⑧ではジェフリーが脱け、ニュー・バースよりレズリー・ウイルスンが加入。
現代感覚に長けたマイケル・ストークスがプロデュースを担当し、イメージも一新。
ゴスペル上がりのレズリーのシャウトが爆発する傑作ファンク「キッキン・バック」をフィーチャーした素晴しいアルバムだ。
⑨はレズリーがディープに歌い込むタイトル曲が秀逸だが、全体にややヴォルテージの低下は否めない。→(555)
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則

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