CURTIS MAYFIELD / Back To The World
LP (Curtom CRS-8015)
Producer: Curtis Mayfield

70年代のニュー・ソウル・ムーヴメントの中心的役割を果たしたカーティス・メイフィールドが、73年に発表したソロとしては5枚目のアルバム。
カーティスの代表作であるだけでなく、70年代のソウルを代表する実り多き1枚だ。
ラヴ・ソングもあるが、まずはヴェトナム戦争からの帰還兵の心情、とまどいをストレートに歌ったA(1)を始め、A(2)(3)、 B(1)(4)の真摯なメッセージの発し方、これがきめ手だ。
カーテイス独特のファルセットが、実に心に染みる。
切迫感をもって聴き手に届く。
優しく。かつラディカルにラヴ&ピースを説<カーティスである。
サウンド面での独創性も群を抜いたもので、軽快なノーザン・ビートを基本にしながらも、糸をひく様な自身のワウワウ、パーカッション、緊張感を増すストリングスなど、70年代のカーティスの作り出す音は、全く他とは違うものだ。
また、本作ではスライに触発されたか、リズム・ボックスも使い、全体にビートがタイトかつ縦割りの,ソリットなファンク・サウンドも目立つ。
ノーザンぽさの濃いA(2)、B(3)からヘヴィなA(1)やよくはねるB(2)などまで、それぞれの二ュアンスの違いも面白い。
▶ Some More from this Artist :
①”Curtis” (Curtom 8005)
②”Curtis/Live!” (同 8008)
③”Roots”(同 8009)
④”Super Fly” (同 8014)
⑤”Curtis In Chicago” (同 8018)
⑥”Sweet Exorcist” (同 8601)
⑦”Got To Find A Way” (同 8604)
⑧”There’s No Place Like America Today” (同 5001)
以上ソロ・デビューした70年から75年頃までのアルバム。
わずか6年間でこれだけをものにした。
その創造力には恐れ入るが、それも時代の勢いあらばこそだったのかもしれない。
インプレッションズ時代からメッセージ色は濃かったが、一層社会的な色合いを増したソロ時代のカーティスである。
同様に、実にメロウなラヴ・ソングも聴かせてくれたわけだが、独創的な音作り共々、70年のソロ第1作の①で、その後のカーティスの原型を提示しているといっていいだろう。
続く②は、おそらく71年録音の2枚組ライヴ。
インプレッションズ時代のヒット曲と、ソロ転向後の曲を混ぜあわせてのもの。
小編成のコンボによる演奏だが、ライヴならではの時間をかけてのクールなグルーヴも楽しめるし、観客との一体感、会場の空気というものが伝わってくる。
ダニー・ハザウェイのライヴ盤と通じるものがある。
3枚目の③は、シヴィアなメッセージを持った曲よりも、ラヴ・ソングの方が目立つが、音作りは変わらず実験的で意欲的。
やはり代表作のひとつだ。
同じく72年の④は同名映画のサントラ盤で、“Freddie’s Dead”、 “Super Fly”の大ヒットを生み、アルバム自体もチャート1位に輝いた彼最大のヒット作。
インストもあるが全体の統一感は素晴らしく、また全体のクールさもひとしおである。
⑤はジーン・チャンドラー、ジエリー・バトラー、ニュー・インプレッションズらを迎えた、同窓会アルバム。
74年の⑥⑦は、他のアルバムと較べれば地味な印象はまぬがれないが、特に⑥は内省的な名作だ。
そして、75年の⑧は、カーティスがまた新たな局面を見せた大傑作だ。
タイトル通り、自分の身のまわりの状況の厳しさを、その中に身を置いたものとして歌ったものがほとんど。
音的には、これまでにない様な隙間が多く、異様な緊迫感を持つサウンド。
カーティスのファルセット・ヴォイスの切迫感も凄まじい。
ただし、セールス的には、もう一つだったためか、以後は、メロウなラヴ・ソングを全面に出したアルバム作りとなる。
⑨”Give, Get, Take And Have” (Curtom 5007)
⑩Never Say You Can’t Survive” (同 5013)
⑪”Short Eyes”(同 5017)
⑫”Do It All Night”(同 5022)
⑬”Hearbeat”(同 3053)
⑭”Something To Believe In” (同 3077)
⑮”The Right Combination” (同 3084)
⑯”Love Is The Place” (Boardwalk 33239)
⑰”Honesty” (同 33256)
⑱”We Come In Peace With A Message Of Love” (CRC 2001)
⑲”Live In Europe” (Curtom 2-2901)
⑳”Perple Get Ready” (CD Essential 003)
㉑”Take lt To The Street” (Curtom 2002)
⑪はサントラ、後はリンダ・クロフォードとのデュエットだ。
全体的に甘い展開を見せる様になったが、⑨⑩はさすがに良質な内容だ。
ディスコ時代の⑬⑭(79、80年)にしても、しっかりと聞かせる部分があるのはさすがだ(以前程の鮮烈な輝きがわれてるのは仕方ない)。
久々のストリートに戻りメッセージを盛り込んだ㉑も、実に誠実な表現が溢れている。
常に優しく、愛と苦しみを歌ってきたカーティス・メイフィールド、信頼するに足るアーティストだ。
転載:U.S. Black Disk Guide©小出斉

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