ISAAC HAYES / Live At The Sahara Tahoe
LP (Enterprise ENS-2-5005)
Producer: Isaac Hayes

ライターとしてのアイザック・ヘイズの業績に関してはそう異論はないだろう。
ぼくはさらにキーボード奏者としての彼(特にスタックス以前)にも非常に興味を持っている。
が、歌手アイザックとなると、今まで敬達してきたと言わざるを得ない。
回りのブラック・ミュージック・ファンを見ても惨償たるもので、彼のファンだという人に1度もお目にかかったことがない。
同時代のカーティス・メイフィールドがあれだけ再評価されているのだから、彼にも少しはスポットが当てられていいとも思うのだが、その動きすらない。
まあ、カーティスは声にぬくもりが感じられるし、歌も味がある(もっともうまいとは思わないけど)のだが、アイザックは歌が下手な上に、声もただ太いだけで味もへったくれもないと来ている。
これでは、再評価も難しいかと思ってしまう。
だが、70年代初期には、彼はカーテイスやマーヴィン・ゲイらと並ぶ新しいソウル・ムーヴメントの先頭に立ち、同じくらい評価されていたのである。
では、なぜ彼が再評価されないかというと、その運動のプラス面ばかり持ち上げられ、マイナス面に全く目をつぶってしまっているからだと考えられる。
カーティスもそしてダニー・ハサウェイも、確かにマイナス面もあったのだが、まるで無視されてしまっているのだ。
そして、そのマイナス面はこうしたアイザックのような人たちに押しつけられてしまっているのである。
そこで、彼の音楽を見てみると、「シャフトのテーマ」などは決して悪い曲じゃなく、むしろカーティスやマーヴィンにはっきり影響を与えていたことを感じることができる。
なにしろ、彼がこの映画音楽を手掛けたのは、カーティスの“スーパーフライ”やマーヴィンの“トラブル・マン”の1年くらい前のことなのだ。
ここに取り上げたのは、その人気絶頂の頃(72年頃にネバダ州でライヴ録音された2枚組だが、彼の多才な面が一番よく出ていると考えた。
C面にはブルース2曲という目を見張る部分もあり、これも下手であれ全く不自然さはないということに驚かされる。
悲劇は、こうした“ルーツ”を彼はカーテイスのようにふくらますことができないところにあった。
後は、A(1)、B(4)、さらにビル・ウィザーズの曲2曲など、音に対し極めて鋭い耳を持っていた彼だけに、バンド演奏の方はさすがしっかりしている。
▶ Some More from this Artist:
アイザックの歌手デビューはスタックス以前、62年頃のことで、そのシングルは何と日本発売(!)されており、その下手さ加減にあきれた記憶がある。
だが、正式のデビューは69年の “Hot Buttered Soul”(Enterprise 1001)あたりと考えていいだろう。
続いで”Movement”(同1010)を出し、これが彼のバンド名ともなる。
スタックスでは、”Shaft”(同5002) も重要作だが、リイシューも含め他に10枚以上ある。
スタックス倒産後の彼は75年にホット・バタード・ソウルを設立,ABC/ポリドールにやはり10枚ほどのソロ・アルバムとディオンヌ・ワーウィック、ミリー・ジャクスンとのデュオ・アルバムを残している。
基本的にディスコ的なものが多いが、そうなると意外と声がソウルフルに聞えたりするから不思議。
代表作というわけではないが、76年の”Juicy Fruit (Disco Freak)”(ABC 953)を挙げておく。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志

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