「ゆっくりしよ」と思ってた矢先の電話
長く続けた仕事を辞めることにした。有給が付与される日をきっちり待って、繰り越しと合わせて30日分。消化しながらゆっくり次を考えよう——そう段取りを組んで、退職の意思も伝えた。その、まさに次の日だった。
かかりつけの内科から電話がかかってきた。「前立腺がんの懸念があるので、がんセンターの予約をとってください」。
正直、笑うしかなかった。人生の肩の力を抜こうとした瞬間に、いちばん力を入れなあかん案件が飛び込んできたわけで。
ただ、先に大事なことを書いておく。この時点ではまだ「がん」と決まったわけではない。PSA(前立腺の腫瘍マーカー)が高めなどの理由で「念のため詳しく調べましょう」という段階で、精密検査に回される人はたくさんいるし、そこで問題なしになる人も普通にいる。今わかっているのは「ちゃんと調べておこう」というところまで。この記事も、その前提で読んでほしい。
そんなわけで、兵庫県立がんセンターに初診で行ってきた。同じように不安を抱えて初めて行く人のために、当日の流れと「これは知っておくと詰まらない」というポイントを、体験そのままに残しておく。
まず結論:この病院、とにかく「現金」と「リアルカード」を持っていけ
先に、この記事でいちばん伝えたいことを書く。兵庫県立がんセンター(※旧庁舎。隣で新庁舎を建設中なので、いずれ変わる可能性はある)は、キャッシュレスがほぼ通用しない。
- マイナ保険証はリアルカード必須。スマホ搭載型のマイナ保険証には非対応だった。
- クレジットカードもリアルカード必須。タッチ決済に対応していないので、スマホ決済・Apple Pay系は詰む。
- 駐車場代は現金のみ(100円だった)。
スマホひとつで来ると、受付でも会計でも駐車場でも立ち往生する可能性がある。財布にリアルのマイナ保険証(または保険証)、リアルのクレカ、そして小銭を含む現金。これだけは必ず持っていってほしい。私は会計のとき、クレカを忘れて現金で払うことになった。
当日の持ち物リスト
予約票に書かれていた基本の持ち物に、実際に行ってわかった「+α」を足したのがこれ。
予約票に記載の持ち物
- 初診予約票
- マイナンバーカード(または保険証)
- 診察券(持っている人)
- 診療情報提供書(紹介状)
- 検査データ・画像検査データ(CD・DVDなど、あれば)
- お薬手帳
- 問診票(記入して持参)
行ってわかった、追加で必須のもの
- リアルのクレジットカード、または現金(会計用)
- 駐車場代の小銭(現金のみ)
なお、紹介状(診療情報提供書)は封筒に入って封がされている。開けずにそのまま受付に渡すこと。中身は自分で開けるものではない。
初診当日の流れを、時系列でぜんぶ書く
ここからは、初診が実際どういう順番で進むのか、迷ったポイントも含めて時系列で残しておく。予約時間は10時30分だった。
9時過ぎ:駐車場、もう埋まりかけ
予約は10時半だが、初診扱いは受付の手続きが多いと聞いていたので早めに着くようにした。9時過ぎに到着した時点で、駐車場はもうかなり埋まっていた。初診で行くなら、予約時間の90分前くらいに動くのが正解だと思う。結果的にこの早め行動がずっと効いてくる。
受付:初回だけの手続きで約30分
問診票は事前に記入していったが、それでも受付で以下をこなすのに30分ほどかかった。
- カルテ用の診察申込書の記入
- 身長・体重の計測
- 呼出受信機(ポケベルみたいなやつ)の貸出
これは初回だけの手続きなので、2回目以降はここが丸ごと無くなる。初診の日がいちばん煩雑ということ。受信機を受け取ったら、あとは鳴るまで座って待てるので少し楽になる。
各科へ移動:血圧測定と「痛みのスクリーニング」
受信機をもらったら、担当科(私は泌尿器科なのでBブロック)へ移動。そこで血圧計で血圧を測ってから受付する。
受付ではタブレットで「痛みのスクリーニング」を入力する。今の痛みの有無・強さ・部位などを答えていくもので、これはがんセンターでは初診時に全員が取る標準項目。特別しんどい人だけがやるものではないので、痛みがなければ「なし」でそのまま正直に入力すればいい。
ここが罠:採尿の動線
診察前に採尿を指示された。これが初見だと本当にわかりにくかったので、順番を正確に書いておく。

- 採尿は機械で受付する。ところがその受付機が、案内された進行方向の後ろ側に置いてあって、まず見つからず迷った。
- 診察券を機械に通すと、名前が印字されたシールが貼られた紙コップと、受付票が出てくる。
- 採尿室で採尿する。
- 採尿後、受付票を渡すのは採血室の受付。私はBブロックの受付に戻ってしまって、出戻りした。
この「4」を知っているだけで無駄足を防げる。採尿とセットで採血もある場合、受付票は採血室へ。
診察待ち:看護師さんとの面談が入る
採尿・採血の結果待ちもあって、診察はだいぶ後ろ倒しになった。11時過ぎに、診察の前に看護師さんとの面談があった。これは診察が押しているときのフォローで、先生の診察の前に状況や困りごとを先に聞いておき、診察をスムーズにするためのものらしい。
私はここで、今の状況を正直に話した。「退職を決めて有給消化でゆっくりしようと思っていた矢先の出来事で、正直、困惑している」と。こういう生活背景や不安は、先生には言いそびれがちなので、看護師さんとの面談で吐き出せたのは意味があったと思う。
診察:今日は「今後の段取りを決める日」だった
11時50分頃、ようやく診察。ただ、先生と大した話をしたわけではなかった。今日わかったのは今後のスケジュールが中心で、こんな流れになった。
- MRI撮影
- その数日後に、撮影結果の説明
- その後、組織を取る検査(前立腺生検)の可能性
最初は「あれ、これだけ?」と拍子抜けするかもしれないが、これは自然な流れだと後で理解した。前立腺の評価は、血液検査(PSA)と画像(MRI)が揃わないと本格的な話ができない。だから初診では、まず検査の段取りを決めるところまで、というのがむしろ王道。「MRI → 結果説明 → 必要なら生検で確定診断」という順番は、前立腺がんを調べるときの標準的なルートだ。
がん相談支援センターの案内
診察のあと、「がん相談支援センターに寄ってください」と言われた。とはいえ今回は「こういう相談できる窓口がありますよ」という場所の紹介だけで終わった。
このセンターは、初診の人にはだいたい一通り案内される。治療の不安、お金のこと(高額療養費など)、仕事との両立、セカンドオピニオンまで、無料で相談に乗ってくれる窓口だ。患者本人だけでなく家族でも使えるらしい。今日は紹介だけだったが、この先で迷いが出たときに「使える場所がある」と知っておくだけで、気持ちがずいぶん違う。
会計:3割負担で1400円
会計に書類を提出。ここも初見だとわかりにくいのだが、書類を箱に入れて、受信機が鳴るまで待つという仕組み。受付のときと同じで、提出したらその場に立って待つのではなく、鳴るまで座って待っていい。
初診でこれだけの検査をして、3割負担で1400円だった。思ったより抑えめで良心的。
なお会計まわりでは、支払い方法でちょっとした顛末もあったのだが、それは次回の記事で書くことにする。
次回来院の説明を受ける
初診だったので、次回以降の来院手続きの説明も受けた。次からは再来受付機に診察券を通すだけで、呼出機と受付票が出るとのこと。次はMRIなので、その撮影場所の近くで待機しておけばいい、という案内だった。
駐車場:割引があるが、提示タイミングは自分から聞くのが確実
駐車場は、駐車券を提示すると1時間100円のところが1日100円になる。3時間近くいても100円で済むのは、この割引のおかげだ。
ただし注意点として、この駐車券をどのタイミングで提示すればいいのかが、初見だとわかりにくい。会計や次回説明の流れの中で案内されるはずだが、窓口で自分から「駐車券の割引はどこでお願いすればいいですか?」と聞くのが確実。せっかくの割引を取り逃さないように。
そして支払いは現金のみ。ここでも小銭が要る。
朝9時前に着いて、全部終わったのが正午過ぎ。初診のフルコースは、だいたい3時間コースだと思っておくといい。
これから初診で行く人へ、まとめ
同じように不安を抱えて兵庫県立がんセンターに初めて行く人へ、今日の教訓をまとめておく。
- 予約時間の90分前行動。駐車場は9時過ぎで埋まりかけ、初回受付だけで30分かかる。
- **リアルのマイナ保険証・リアルのクレカ・現金(小銭込み)**を必ず持つ。キャッシュレスは通用しないと思っておく。
- 紹介状の封筒は開けずにそのまま渡す。
- 採尿の受付機は案内の後ろ側にある。受付票は採血室へ。
- 会計は書類を箱に入れて、受信機が鳴るまで待つ。
- 駐車券の割引(1日100円)は、窓口で自分から聞くのが確実。支払いは現金のみ。
- 初診は検査の段取りを決める日。その場で結論は出ないことが多いので、拍子抜けしても不安にならなくていい。
- がん相談支援センターという無料の窓口がある。お金・仕事・不安の相談を覚えておくと心強い。
(※これは新庁舎建設前の、旧庁舎時代の記録です。設備や運用は今後変わる可能性があります。)
おわりに
退職の段取りを組んだ矢先に「がんの疑い」。人生、こういうタイミングで転がってくるものらしい。
まだ何も確定していない。MRIを撮って、結果を聞いて、必要なら生検で確定診断へ——という入り口に立ったところだ。結果が出たら、またここに書こうと思う。
同じ道を通る誰かの、ほんの少しの予習になれば。

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