前編で書いた通り、都会・高松での稼働は空回りやった。鳴らん、安い、昼メシの記憶も飛ぶほど焦る。マルナカの電波地獄で苦労した末に四国稼働初のチップ¥311をもらえたのは救いやったけど、稼ぎのペースは一向に上がらん。
そこで俺は、この日いちばん大きな決断をする。高松を、見切る。
数字が教えてくれた「鳴ってない時間」
なんで見切ったか。数字を見たら、答えが出てたんや。
受けたオファーの時刻を並べて、実際に配達にかかった時間を差し引いてみる。すると——間がスカスカなんよな。オファーとオファーの間に、30分、1時間と、平気で空白がある。走ってる体感時間のわりに、実際に配達で動いてる時間は、スキマだらけ。
つまり、**「稼働してるつもりで、その大半は”鳴るのを待ってるだけ”の時間」**やった。それが数字でハッキリ可視化される。ずっと待機して、たまに¥350前後が鳴る。これが都会・高松の現実か、と。
配達員の強みは、ダメな漁場は捨てて、次の海へ動けることや。固定給のバイトやったらそうはいかん。でも俺は今、バイクで四国を旅してる身。稼げん場所に見切りをつけて、移動する自由がある。
——西へ行こう。 しおりが元々通る、丸亀・宇多津の方面へ。
宿を捨て、走りながら次の寝床を探す
ここで、ちょっとした綱渡りが始まる。
今夜の宿は、しおりでは快活CLUB高松中央通り店を予約してた。でも西へ動くと決めた以上、高松の宿は要らん。予約をキャンセルする。
じゃあ今夜どこで寝るか。西の丸亀に、快活があるはず。走りながら、スマホで丸亀の快活の空き状況をネットでチェックする。……フラットシート、残り3席。
ここで、快活CLUBのシステムの罠に気づく。キャンセルは30分前までOK、つまり直前まで枠が動く。ところが——当日の新規予約は、できない。ネットで押さえることができひんのや。ということは、行ってみて空いてなかったら、詰む。
だから、残り3席が減ってへんか、配達の合間に何度もチェックしながら西進する羽目になる。稼ぎながら、同時に「今夜の寝床が消えへんか」を睨み続ける。稼ぐ緊張と、寝床の緊張。二重の綱渡りや。
ちなみにこの「西の快活どこがある?」を最初に相談したのは、こーちゃん(AI)や。Day2ではスマートキーで役立たずっぷりを発揮したこーちゃんやけど(笑)、こういう「西方向の快活を挙げて」みたいな情報の振り方には、ちゃんと使える。方向はAIに出させて、”当日予約できない”みたいな肝心の穴は、自分でネットを見て詰める。Day2の「AIに丸投げして振り回される」から、だいぶ付き合い方が上手くなってきた気がする。
バイパスでは、鳴っても取れない
西進の道中、これまた配達員にしか分からん場面があった。
バイパスを走ってる最中に、坂出のオファーが鳴った。でも——バイパスを降りれない位置やった。
高速的なバイパスは、任意の場所で降りられん。ピックに向かうには、次の出口まで行って、また戻ってくる羽目になる。時間ロス確定や。だから、この坂出は泣く泣く拒否した。
その後、信号のある一般道の区間に入って、身動きが取りやすくなったところで鳴ったオファーを受けた。すき家 善通寺上吉田店、¥412。
つまり、同じオファーでも「今、自分がどの道を走ってるか」で、受けられるか決まる。バイパスは速いけど、鳴っても取れん。一般道は遅いけど、小回りが利く。オファーの数字の良し悪しやなくて、“自分の位置と道の状況”がジャッジを左右する——これは、走ってナンボの世界でしか身につかん感覚や。
そしてこの¥412で、俺は善通寺市に入った。高松を見切って、坂出を通過して、西へ。日も暮れてきた頃や。
善通寺、通過点のはずが、よく鳴る
面白いことが起きた。通過点のつもりの善通寺で、高松よりよく鳴るんや。




- 18:13|すき家 善通寺上吉田|¥412
- 18:43|マクドナルド 319善通寺|¥416
- 19:01|すき家 善通寺上吉田(また!)|¥402
- 19:15|焼肉松坂 国道店|¥418
善通寺で、立て続けに4件。都会の高松であれだけ焦ってたのに、見切って移った先の小さな街の方が、コンスタントに拾える。この皮肉よ。「都会=稼げる」の思い込みが、綺麗に裏切られる。見切りの判断は、正しかったわけや。
(ちなみに、すき家 善通寺上吉田店は2回ピックした。善通寺の常連みたいになっとる。あと、この旅マックにもよう呼ばれる。マクドナルドはUber Eatsの太客やから、どの街でも安定して鳴るんよな。均一な全国チェーンやけど、実は店舗ごとに受け渡しの雰囲気は違ったりする——都心やと手提げ袋なしの店があったり。同じマックでも、土地で少しずつ顔が変わる。何百店舗も回るからこそ見える差や。)
配達で知った、”軍都”善通寺
善通寺で3件、4件と走るうちに、俺はこの街の意外な顔を知る。
善通寺には、自衛隊の駐屯地がある。
走ってて「え、駐屯地あるん!?」と気づいた。あとで知ったけど、善通寺は明治期に旧陸軍の師団が置かれた、古くからの”軍都”なんやそうな。今も陸上自衛隊の駐屯地がある。
夕方、勤務を終えたらしい隊員さんが、制服のまま帰宅の途につく姿を、何度か見かけた。観光ガイドに載る善通寺は「弘法大師・空海が生まれた地、五重塔の町」や。でも、配達で走り回った俺が見たのは、ガイドに載らへん”軍都・善通寺”の、夕方の生活の風景やった。
これ、観光してるだけやったら絶対に見えへん。稼働という”住民に近い動き”をするからこそ、その土地のリアルな日常に出くわす。 配達員の旅ならではの、街の知り方や。
五重塔の下で、この旅初めての自撮り
そのすき家の配達、ドロップ先が善通寺の中心部——五重塔のすぐ近くやった。
せっかくやし、と足を止める。曇り空の下、広い石畳の広場に、弘法大師生誕の地・善通寺の五重塔がそびえてる。朝、香川の入口で入った店が「空海房」やったことを思うと、うどんで始まった一日が、夕方に本物の空海ゆかりの地に辿り着いた——ちょっとした符合や。
で、その五重塔を背に、自撮りを一枚撮った。


……思えばこの連載、ずっとオファー画面のスクショと、メシの写真ばっかりやった。旅の当人であるはずの俺の顔は、この記事にはまだ一度も出してへん。 ふだんのTwitterでは自撮りも上げてるんやけど、このブログにはあえて出さんとやってきた。それをここで——五重塔をバックに、ヘルメット被った”おっさん”を、初めて登場させる。
ガチ観光やない。配達のドロップ先が、たまたま名所の近くやったから、ついでに寄っただけや。稼ぎながら、土地の象徴に自然に出くわす。これが、この旅の観光の仕方や。
しかも背景が荘厳な五重塔やのに、写ってる本人はわりとマジ顔(笑)。ハイライトの高揚感やなくて、鳴らんくて焦った午後を抜けてきた、ちょっと疲れも滲む顔。まあ、それがこの旅の正直なとこや。
(この時、俺はSNSに「善通寺来たんでおっさん自撮り🤣」と呟いてた。実はこの日、道中ずっとリアルタイムで旅を実況しててな。「灼熱なのに鳴らない」とか、その場の焦りや面白がりを垂れ流してた。そしたら、配達員仲間の”たろうさん”や”モンゴルさん”等が、ぽつぽつ「いいね」をくれる。一人で四国を黙々と走ってるようで、SNSの向こうには、同じように各地を巡る配達員仲間がおる。孤独に見えて、ゆるく繋がってるんよな。)
中編を終えて
高松を見切って、西へ。バイパスの判断で玉を選び、善通寺では通過点のはずが4件拾い、”軍都”の顔を知り、五重塔の下で初めて自分の顔を撮った。
前半の「都会で鳴らず焦る」重い空気から、西進を決めてからは、少しずつ前に進む手応えが出てきた。見切る判断、道を読む目、AIの使い方——徳島の「全部受けて数をこなす」段階から、香川では**”自分で見切って、選んで、動く”**段階に、確かに進化してる。
そして、いよいよ丸亀。今夜の寝床は、まだ綱渡りの途中や。無事にあの残り3席にありつけるか——。
Day3 後編に、つづく。

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