【四国縦断 Uber Eatsで巡る旅】Day4 中編|沈黙を破る¥511、そして”拉致”を振り切る

四国縦断 Uber Eatsの旅

前編のおさらいから。

丸亀を出て、7:07に善通寺で1件(¥623)。そのあとは三豊も観音寺も、うんともすんとも言わへん無音の朝。道の駅とよはまでうどん食って、黄金持ちの聖地で拝んで、川之江城でプチ観光して、紙のまちの威容に唸って――稼ぎはたった¥623のまま、気づけば愛媛の四国中央市を抜けようとしてた。

「大丈夫かな、これ」。財布は寂しい。けど、走るのはやめられへん。西へ、西へ。

そんで、その沈黙がようやく破れたのが、新居浜やった。

10:40、ついに鳴った。ココイチやった。

新居浜市に入って、しばらく走ってたら――鳴った。

カレーハウスCoCo壱番屋 新居浜松木町店

正直、ホッとした。7:07の善通寺から、実に3時間半ぶりの1件や。あの無音がずっと続いてたら、今日は一体どうなってまうんやろ、って不安がピークに達しとった。その沈黙を破ったのが、全国どこにでもある安心のココイチっていうのが、なんや妙に沁みた。派手さはないけど、確実に鳴ってくれる。ありがたい。

  • ¥511/5.7km/24分

ここでちょっと面白いことに気づいた。無音やったおかげで、逆にめちゃくちゃ進んどる。寄り道し放題やったから、道の駅も城も全部こなして、それでもまだ10:40。旅のしおりでは「新居浜見切り14:50」って書いてたのに、4時間も前倒しで新居浜に着いてしまってる。

稼ぎはゼロに近い。けど、旅としては予定よりずっと早く、順調に西へ進んでる。この妙なねじれが、今日という日の性格を表しとった。

新居浜は、鳴る街やった

沈黙を破ったら、そこからは堰を切ったように鳴りだした。

11:22、中華蕎麦つけ麺 一(hajime)新居浜店でピック。そこに「配達の追加」――ダブル案件が乗った。近くのローソン新居浜駅南を、ついでにもう1件。

  • ベース:つけ麺一 ¥394
  • 追加:ローソン +¥205
  • 合わせて¥599

つけ麺屋のあとにコンビニを1個拾う、効率のええダブルや。新居浜は工業都市やからか、需要がしっかりある。無音の午前がウソみたいに、エンジンがかかってきた。

¥894。今日いちばんの単価。でも――

12:07、デカいのが鳴った。

タージマハル西条店。西条のインドカレー屋や。金額を見て、おっ、と声が出た。

  • ¥894/17.8km/41分

今日いちばんの高単価。しかも、ついに西条まで来た。しおりの最大の懸念やった「西条見切り15:30」――西条に着くのが遅れて総崩れになるんちゃうか、ってビクビクしてたやつ――が、12:07の時点でもう西条到達や。心配は完全に杞憂やった。

ただ、この¥894には裏があった。ピックは西条やけど、ドロップ先は新居浜。つまり、せっかく西の西条まで来たのに、17.8kmかけて東へ引き戻される案件やったんや。

……これ、朝イチの善通寺の”戻り”と、まったく同じ構図やん。西へ行きたいのに、東へ引っぱられる。今日はどうも、こういう「戻され」がついて回る。まあ、時間はアホほど余ってるし、¥894なら文句なしに受けるけどな。

新居浜に、吸い戻される

タージマハルの荷物を新居浜まで運びきったら、案の定、そのまま新居浜での稼働が続いた。

  • 12:38 ガスト新居浜店 ¥320(3.5km)
  • 12:53 ガスト新居浜店(再) ¥355(6.02km)スクショ忘れ

ガストから立て続けに2連発。西条にちょっとタッチしたと思ったら、¥894で新居浜に引き戻されて、また新居浜でぐるぐる。「西条、通り過ぎたと思ったのに、戻ってきてもうた」って感じや。

ちなみにこの日、配達する飯のジャンルがえらいカオスやった。うどん、ココイチ、つけ麺、ローソン、インドカレー、そしてガスト。無国籍にもほどがある。腹は減ってへんのに、いろんな匂いを背中に乗せて走り回ってた。

「新居浜に拉致される」――ここで、俺は振り切った

――で、ここが今日のターニングポイントや。

もともと、途中の町(新居浜とか)は”流し程度”のつもりやった。本命は松山。だから、オファーが途切れたタイミングで、「よし、松山へ向かおう」と決めた。

けど、走り出そうとした矢先、また鳴る。しかも新居浜へ呼び戻す方向のオファーが、2件

ここで俺は、はたと気づいた。

「これ受けとったら、俺、いつまでも新居浜に拉致されるやん」

朝からずっとそうやった。善通寺に戻され、西条から新居浜に戻され、ガストでぐるぐる。今日はずっと、鳴るがままに、東へ東へと引きずられてきた。でも、もうええ。松山が気になる。西へ行きたい。

だから――拒否した(笑)

呼び戻しの2件を蹴って、俺はハンドルを西に向けた。今日はじめて、鳴るがままやのうて、自分の意志で進む方向を決めた瞬間やった。

松山まで、また無音。でも、それでよかった

拉致を振り切って松山へ向かうと――当然のように、また鳴らへんくなった。西条を抜けて、桜三里の山越え区間。松山までの道のりは、ふたたび無音や。

でも、不思議と焦りはなかった。だってもう、稼ぎのために走ってるんやなくて、行きたい方へ走ってるんやから。

結果として、しおりで散々気を揉んでた「西条見切り15:30」は、あっさり無意味になった。西条で粘らずに流したから、15:30どころか、もっと早い時間に松山へ滑り込むことになる。緻密に計画してた綱渡りが、蓋を開けたら「新居浜で稼いで、西条スルー、松山早着」。計画と現実は、いつもこうしてズレていく。

そして、松山の市街地に入った瞬間――久しぶりの1発が、また鳴る。

そこから始まる松山の夜は、この旅で一番濃い時間になる。骨付鳥のリベンジも、大都会の高揚も、全部そこで待ってた。

――続きは後編で。

(つづく)

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