しまなみを渡りきって、ついに本州・尾道に上陸した。四国縦断の旅も、とうとう四国を出た。感慨に浸る……間もなく、尾道が俺をボコボコに振り回してくる。宿までの道からして、もう普通ちゃうかった。
Day6後編は、尾道の宿にたどり着くとこから、夜のウバオン地獄、そして最後に尾道ラーメンにありつくまで。この旅でもトップクラスに濃い数時間や。
宿は駅から徒歩5分。ただし「人しか通れん道」
今日の宿は、ゲストハウス「いろは荘」。尾道駅の北口から徒歩5分ほどのとこにある。リベシティのポイントで泊まれるから、現金の持ち出しはゼロ。ありがたい。
まずバイクを停める。駅の北口に無料の駐輪場があったから、そこにリード125を置いた。バイク旅で宿を選ぶとき、俺がいちばん気にするのは「バイクをどこに停めるか」やねんけど、駅前に無料で置けるんは助かる。
問題はここからや。宿へは、この駐輪場から歩いて向かう。ところがその道が――人しか通れん細道やねん。しかも、最初の数分がずっと坂。

写真で伝わるやろか。家と家の間の、白い手すりが付いた細いコンクリの道。車どころか、バイクも入られへん。荷物背負って、この坂をひたすら登る。数分登っただけで息が上がる。尾道が「坂の街」やっちゅうのは知識では知ってたけど、体で味わうとなかなかキツい。
途中、さらに道が険しなる。トタン塀沿いの、木が覆いかぶさって薄暗い、苔むした激坂。奥は階段になってる。

坂を登ってる途中で後ろを向いていま来た道をパシャリ。
「ほんまにこの先に宿あるんか?」て不安になる道や。観光雑誌やと「風情ある尾道の坂道」て美しく書かれるあれやけど、荷物担いで登る側からしたら、風情っちゅうより修行や。
登り切ったら、古民家
ゼエゼエ言いながら登り切ると、いろは荘に着いた。

赤茶色のトタン屋根の古民家や。玄関先に傘立てとか貼り紙とか、レトロな黄色い自販機の什器なんかがあって、ええ味出してる。背後には尾道の街並みがびっしり見下ろせる。さすが高台。古民家に泊まる、っちゅう事前のイメージ通りの佇まいやった。ここは予想通りで満足や。
ちなみに、さっきの細道の写真に、バイクが1台停まってたやろ。あれ、俺のちゃうねん。住人の人のバイクや。「え、こんな細道までバイクで上がってこれるん?」て驚いたんやけど、どうやら地元の人は、車やバイクで入れる別ルートを知ってるらしい。俺は律儀に駅前に停めて、徒歩でこの修行の坂を登ったわけや。地元は攻略法を知ってて、よそ者は正規ルートで坂に泣く。この構図、あとでもう一回出てくる。
宿でひと息……と言いたいとこやけど、まだ夕方。せっかく尾道おるんやし、荷物置いたら、また出る。稼ぐで。
尾道の夜、ウバオン地獄の幕開け
尾道でウバオン開始。ここからが本日のハイライト、いろんな意味で。
その1:ナビが原付NGのバイパスに突っ込ませようとする
最初の案件は、マクドナルド東尾道店。¥486、9.1km。まあまあのロングや。これは無事成立したんやけど、道中でヒヤッとした。

配達先に向かうのにGoogleマップに従てたら、案内されたのが尾道バイパス。……これ、自動車専用道路や。原付二種は通行禁止のやつ。危うくそのまま突っ込みかけて、「あかんあかん、これ125cc入られへんやつや」と寸前で気づいて回避した。アウェイの尾道で、夜で、配達の時間制限もある中で、自力で下道にリカバリー。
前編で「朝のGoogleマップはファインプレーやった」て書いたけど、こっちが本性や。ナビは車基準やから、平気で原付が通れん道に突っ込ませようとする。原付二種乗りのあるあるやな。
その2:ダブルが県境の向こうに飛ばそうとする
この配達の途中、ダブル――配達の追加のオファーが、立て続けに2件飛んできた。
- かつ庵 福山高西店 …… +¥210
- すき家 2国福山高西店 …… +¥247
両方とも拒否した。理由は店名で分かるやろ。「福山」や。県境をまたいで、隣の広島県福山市まで飛ばされる案件やねん。


地図見たら一発で分かる。俺が稼働してた尾道の東端、西瀬戸尾道ICとか高西町のあたりって、もうほとんど福山市との境目なんよ。せやからダブルを取ると、ことごとく福山側に引っ張られる。
単価だけ見たら+¥210も+¥247も、距離考えたら悪ない。地元やったら普通に受ける。けど今は旅の途中や。福山まで行ったら宿からどんどん遠ざかるし、明日(Day7)は尾道から福山・倉敷を通って明石まで帰る行程やから、その帰り道の分を今夜のうちに使い果たしたくない。旅先のウバオンは、地元とは判断軸が違う。数字が良くても、旅の都合で切る。これも旅稼働ならではの感覚やな。
その3:保温バッグで揉める
さっきのマック東尾道、実は1件目のとき、店員さんに注意されてた。「保温バッグをお持ちでないと商品はお渡しできないんですが……今回はお渡しするので、次回以降はお願いします」と。
俺、保温バッグ持ってへんわけちゃうねん。ちゃんと持ってる。ただ、バイクに半固定してる状態やから、いちいち外して店内に持ち込むのがめんどくさい。1件目は店員さんが温情で通してくれた。
で、しばらくしてまた同じマック東尾道の案件(¥455)が来た。今度は「次回以降はお願いします」の”次回”に当たる番や。またバッグの件で一悶着あるのが目に見えてるし、半固定のバッグを外して持ち込むのもだるい。……もうええわ、と拒否した。

同じマック東尾道を舞台に、ナビのバイパス誘導、福山ダブル攻勢、保温バッグ問題。次から次へと振り回される。尾道の夜、俺は一体何と戦てるんや。
その4:タンドール尾道店と、尾道の道の本気
マックのバッグ案件を蹴った直後、次に取ったのがタンドール尾道店。インド料理屋や。¥491、8.9km。

これがな……尾道の道の本気を、これでもかと味わうことになった。
配達先に向かう道が、まず狭い。そして崖。さらに急坂。しかもナビが案内するのが、転回不可能な道――バイクの切り返しもできんような、行き止まりみたいな細道に突っ込まされる。ようやく着いたと思ったら、到着地点が家の裏側。玄関どこやねん、と。おまけに夜やから、あたりは暗い。狭い・崖・急坂・転回不能・裏口・暗い。フルコースや。
なんとか無事に届けきったけど、正直、これはしんどかった。尾道の市街地って、坂の街で、道が古くて入り組んでて、一方通行や激坂だらけや。観光で「風情ある路地」て歩く分にはええけど、夜に原付で荷物届ける側に回ると、一気に牙をむく。
尾道の配達員は、すごい
このタンドールの配達で、しみじみ思た。「尾道でウーバーやってる人、ほんまにすごいわ」て。
俺の地元、明石とか神戸の圏内にも、激坂&狭路のエリアはある。垂水とか、神戸市の山手側とか。あのへんもなかなかの坂や。せやから坂道配達自体は慣れてるつもりやった。
けど尾道は一段上やった。狭い・崖・急坂・転回不能に加えて、「暗さ」が乗っかってくる。神戸の山手は、まだ比較的明るいねん。街灯もあるし。尾道の細道は、夜になると本気で暗い。
それとな、正直に言うと、地形のキツさだけの話ちゃう。地元の垂水や神戸山手は、なんやかんや土地勘のあるホームやねん。坂がキツくても、道の勝手が分かってる。どこが行き止まりで、どこが抜けられるか、体がなんとなく覚えてる。けど尾道は完全に初見のアウェイや。初めての道を、夜に、ナビ頼りで走るんやから、そら難易度が跳ね上がる。「尾道の坂は神戸より上」っちゅうより、「尾道の坂+初見のアウェイ」の合わせ技にやられた、が正確なとこや。
よう知ってる地元の地形と比べても、初見の尾道の夜配達は手強かった。これを毎日、ホームとしてこなしてる地元の配達員には、素直に頭が下がる。俺がヒイヒイ言うてる道を、彼らは勝手知ったる庭として走ってるわけやからな。
そういや、しまなみでも「暗かったら標識見落としてたかも」て書いたな。Day6、俺は「暗さ」に二回泣かされてる。
余談:外国人って、坂好きなんかな?
坂の話でひとつ気づいたことがある。いろは荘、泊まってる客を見た感じ、ほぼインバウンド――外国人旅行者っぽかった。あの激坂を登った上のゲストハウスを、わざわざ選んで来てるわけや。
で、思い出した。俺の地元、神戸の異人館街(北野)も坂やろ。垂水のジェームス山にある外国人住宅街も、なかなかの坂や。港町の外国人の住まいって、なんでか高台・坂の上が多い。ほんで今、尾道の坂の上の宿に外国人が集まってる。
外国人って、坂好きなんかな?(笑)
まあ真面目に言うと、昔の神戸や長崎の居留地が高台に作られたのは「眺めがよくて風通しがよくて健康的」っちゅう西洋の考え方が背景にあったらしい。今のインバウンドはたぶんそれとは別で、尾道の坂と路地と眺めそのものが「これぞ日本」っちゅう目的地になってるんやろな。
おもろいのは、俺ら地元の配達員が「坂キツ……」てヒイヒイ言うてるまさにその坂を、外国人は「風情がある!」てワクワクで登りに来てるってことや。同じ坂でも、立場が違うと真逆に見える。しんどさか、風情か。尾道は、そういう街やった。
締めは、オーナーの人情で尾道ラーメン
さんざん振り回されて、稼働でくたくたになって、ふと時計を見た。……あかん、もうええ時間や。尾道ラーメンの専門店、たぶんほぼ閉まってる時間帯や。
尾道といえば尾道ラーメン。これを食わずに尾道を出るのは、さすがに心残りすぎる。どうしたもんかと。
そこで思いついて、いろは荘のオーナーにDMで相談してみた。実はオーナー、今日は出張で不在やってん。事前に「当日は不在です」て聞いてはいたんやけど、やっぱり直接会いたかったなあ、と思てた矢先や。ダメ元で「この時間から尾道ラーメン食えるとこ、どっかないですか」て聞いてみた。
そしたら、ちゃんと返してくれた。「駅前の居酒屋で尾道ラーメン出してるとこがありますよ」と。
教えてもらったのが、「とりかわ権兵衛」っちゅう居酒屋。焼き鳥、いや、とりかわが売りの店らしい。さっそく行ってみた。

出てきたのがこれ。醤油ベースの尾道ラーメンに、チャーシュー、メンマ、青ネギ。背脂の浮いた、これぞ尾道ラーメンっちゅう一杯や。ライスと餃子とサラダも付いた定食スタイル。
味は――うまかった! くたくたに疲れた夜に、この醤油スープが体に沁みる。専門店ちゃう、居酒屋の一品やけど、ちゃんと尾道ラーメンしてた。
ちなみにセットの餃子は「とりかわギョーザ」っちゅう、この店ならではのやつ。初めて食うたけど、正直に言うと、皮好きな人向けやな(笑)。まずくはない。まずくはないんやけど、皮メインな感じで、俺の好みかっちゅうとまあ……ラーメンがうまかったから、よしとする。
しおりは崩れる。けど、縁で埋まる
しおりでは「駅前の谷で尾道ラーメン」っちゅう段取りやった。それは崩れた。今日はしおり通りにいったことなんか、ほぼ一個もない。R194しかり、重松飯店しかり、この尾道ラーメンしかり。
けどな、崩れたしおりの穴を、その都度、現場のリアルと人の縁が埋めてくれた。焼豚玉子飯は偶然の元祖店で、尾道ラーメンはオーナーの人情DMで。会えんかったオーナーとも、こうしてやりとりできて、最後は一杯にありつけた。会いたかった心残りも、ちょっとだけ埋まった気がする。
計画通りにいかんのが旅で、それでもなんとかなるのが旅や。Day6は、それをこれでもかと教えてくれた一日やった。
さあ、いよいよ明日は最終日。尾道から、福山・倉敷を抜けて、明石へ帰る。長かった四国縦断も、ついにゴールや。最終回、Day7に続く。
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【四国縦断 Uber Eatsの旅|シリーズ一覧はこちら → https://funkysay-g.com/category/shikoku-uber/ 】

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